施政方針(令和2年2月定例議会)

更新日 2020年02月12日

令和2年2月文京区議会定例議会(令和2年2月12日)

令和2年2月文京区議会定例議会において、2年度の予算案をはじめ、関係諸議案のご審議をお願いするに当たり、私の所信の一端と新年度の主な施策の概要を申し上げ、区議会並びに区民の皆様のご理解とご協力を賜りたく存じます。

区を取り巻く状況と区政運営の方針

昨年は、アジア初となるホスト国として、ラグビーワールドカップ2019日本大会が開催されました。日本代表は史上初めて決勝トーナメントへ進出し、ベスト8に入る快進撃が注目を集め、日本中が大きく盛り上がりました。私はこの大会を通じて、改めてスポーツの持つ大きな力を感じたところです。そして、いよいよ本年、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が開催されます。大会の成功はもとより、大会を通じて生まれる唯一無二の感動の記憶と記録を、レガシーとして後世に引き継いでいくことも、開催都市の大きな役割であると考えております。

一方で、昨年は立て続けに大型台風が首都圏に襲来し、各地で甚大な被害が発生いたしました。特に、台風19号の際は、特別警報が1都12県に発令され、豪雨等の影響により、71河川140か所の堤防の決壊や、長時間にわたる停電の発生など、災害に対する備えの重要性を再認識することとなりました。

このような、想定を超える災害や、社会環境の著しい変化への自治体の対応力が今、問われております。これまで、区では、基本構想に掲げる将来都市像の実現に向け、3期にわたり基本構想実施計画に示した計画事業等を着実に実施し、区民等との協働・協治の下、様々な行政課題の解決に取り組んでまいりました。それにより、本区の人口は22万人を超えるまでに回復するなど、「選ばれる自治体」として発展を続けてまいりました。今後も、先を見通すことが難しい社会状況において、将来にわたり持続可能で豊かな地域社会を構築していくためには、これまで以上に、迅速かつ柔軟に区政課題を解決していくことが不可欠であると考えております。

このような状況の中、基本構想が計画期間である「おおむね10年」を迎えることから、新たな行政計画として、「文の京」総合戦略の策定を進めております。本戦略では、基本構想の根幹となる理念や将来都市像は、あらゆる分野の共通の指針として、引き続き継承してまいります。

また、各施策を推進するための基本的な考え方として、国連が採択したSDGsの視点も当てはめながら、6つの基本政策を定めるとともに、重要性・緊急性の高い54の主要課題について、その解決に向けて組織横断的に取り組むべきことや、解決手段となる計画事業を明らかにし、毎年度の行政評価や予算編成との連動を図りながら、戦略的な事業展開を図ってまいります。

本区の人口推計では、総人口は、今後、約20年間は増加を続けますが、その後は少子高齢化の進行が一層加速していくと推計しております。当面の人口増に対応する施策を推進する一方、中長期的な人口構成の変化に伴う、区民ニーズ等の変化を見据えた対策にも取り組むなど、一つひとつの行政課題にしっかりと向き合い、その解決に向けた様々な施策の充実に全力で取り組んでまいります。

令和2年度予算の概要

はじめに、令和2年度予算について申し上げます。

歳入では、特別区税は、納税義務者の増等により増加傾向にあるものの、地方法人課税の一部国税化や地方消費税の清算基準の見直し、ふるさと納税等の不合理な税制改正による影響が拡大しております。歳出においては、社会保障関係経費及び区民施設や学校施設の整備等に係る経費の増加が見込まれます。そのため、2年度当初予算の編成に当たっては、事務事業の選択と集中により、限られた資源をより効果的に活用し、バランスのとれた安定的な財政基盤を構築していくことに留意しております。

また、「文の京」総合戦略に掲げる主要課題等の解決につながる施策を、重点的に取り組むべきものとして選定いたしました。分野や組織を横断する視点から、一つひとつの事務事業に、より一層の創意工夫を凝らし、質の高いサービスを提供することで、着実に成果を上げてまいります。

子どもたちに輝く未来をつなぐ

次に、予算の具体的な内容について申し上げます。

はじめに、子どもたちに輝く未来をつなぐための施策についてであります。

全国的に少子化が進行する中、本区の年少人口や子育て世帯は増加傾向が続くものと見込んでおります。だれもが安心して子育てができるとともに、子どもたちが輝く未来に向かって豊かな心を育み、自分らしく健やかに成長していくことができるよう、子育て支援の充実や質の高い教育環境の整備に取り組んでまいります。

まず、子育て支援については、新たな「子育て支援計画」に基づき、保育所待機児童を解消するための緊急対策を引き続き実施いたします。本年4月には、私立認可保育所等を16施設開設するほか、待機児童の多い1・2歳児の定期利用保育等の実施により、スピード感を持って、待機児童の解消を目指してまいります。加えて、私立認可保育所等への指導検査及び巡回指導の体制を一層強化し、更なる保育の質の向上と安全の確保を図ってまいります。

また、私立認可保育所等の整備とあわせて、都立駒込病院内に開設する病児・病後児保育施設に文京区民枠を確保するとともに、春日・後楽園駅前地区への新規開設に向けた準備を進め、安定的なサービスの提供と保護者の就労等の支援につなげてまいります。

次に、教育施策については、新学習指導要領の全面実施等を踏まえ、新たな学びの視点を盛り込んだ「教育指針」に基づき、「生きる力」を育む教育活動の推進と環境の整備に取り組んでまいります。

まず、国際社会で必要とされるコミュニケーション能力の育成を図るため、小学校において、外国人英語指導員の配置を拡充するとともに、「聞く・話す・読む・書く」の4技能を測定する英語技能検定を導入いたします。あわせて、小・中学校及び幼稚園において、「プレゼンテーション能力向上カリキュラム」を実践してまいります。

また、不登校対策の一環として、その未然防止や早期発見、早期対応のため、区立小・中学校における学級集団アセスメントの実施学年を拡大するとともに、スクールカウンセラー及びスクールソーシャルワーカーの配置拡充を図り、不登校を生まない教育環境の整備に努めてまいります。

さらに、特別支援教育の推進のため、本年4月から第八中学校に特別支援学級を新設いたします。

加えて、学校環境の整備については、引き続き、誠之小学校、明化小学校及び柳町小学校の改築を進めるとともに、老朽化が進む小日向台町小学校及び千駄木小学校については、改築基本構想検討委員会において、改築に向けた整備方針を検討してまいります。  

健康で安心な生活基盤の整備

2点目は、健康で安心な生活基盤の整備についてであります。

地域包括ケアシステムの深化・推進に取り組み、だれもが、生き生きと自分らしく、心身ともに健康で自立した生活を送れるよう、高齢者や障害者に対する福祉の充実や、区民の主体的な健康づくりを推進してまいります。

まず、高齢者施策については、「すまいる住宅」の登録を促進するため、入居者の見守りサービスの拡充や、不慮の事故による原状回復費用等の補償を行うことで、家主の不安解消を図り、住宅確保要配慮者の居住安定を推進してまいります。また、旧区立特別養護老人ホーム「文京くすのきの郷」の大規模改修を進め、良好な施設環境において、介護を必要とする高齢者への支援を継続してまいります。

さらに、「8050問題」に対応するため、ひきこもり状態にある本人やその家族を支援する「ひきこもり等自立支援事業」の対象年齢を拡大するとともに、福祉部門を中心とした関係機関の連携強化等に取り組み、総合的な相談支援を行ってまいります。

また、障害者支援については、グループホーム及び生活介護施設の整備を促進するため、事業者に対する整備費や定期借地権の一時金等に関する補助金を拡充するとともに、小石川福祉作業所において、就労支援事業の定員枠の見直し等を行い、生活介護事業を導入いたします。

次に、健康づくりについては、「がん検診システム」における個別受診券の発行により、引き続き、区民の主体的ながん検診の受診など、がんに関する正しい知識の普及啓発と検診受診率の向上に取り組んでまいります。また、がんの治療を続けながら働く人が増え、自分らしく安心した地域生活を送るための支援が求められていることから、治療の影響による脱毛等の外見変化が及ぼす精神的苦痛や、経済的負担の軽減を図るため、ウィッグの購入費用の一部を助成してまいります。

さらに、本年4月の健康増進法の改正や東京都受動喫煙防止条例の全面施行に伴い、講演会やハンドブック等を通じて、受動喫煙防止への理解促進を図るとともに、区内飲食店へのアドバイザー派遣等により、都の条例等に即した適切な対策を促すなど、区民の健康の維持・増進を図ってまいります。 

活力と魅力あふれるまちの創造

3点目は、活力と魅力あふれるまちの創造についてであります。

産業の振興や地域経済の活性化を図るとともに、増加を続ける国内外からの観光客等に向けて、「文化の香り高いまち」としての特性を生かした観光事業を展開するなど、多彩な産業や文化・観光資源が、地域に活力や賑わいを創造する施策を推進してまいります。

まず、産業振興については、起業家教育の専門課程を有する区内大学と連携し、創業意識を高めるための成人向け入門講座や、小学生を対象とした経営や経済の仕組みを学ぶプログラムを実施いたします。また、中小企業の人材不足を解消するため、若年者や女性、リカレント教育修了者など、地域の多様な人材の採用に向けたセミナーや、求職者とのマッチングを行うなど、人材の確保・活用から定着までを総合的に支援し、中小企業の経営基盤の強化を図ってまいります。

また、きめ細かな消費者教育や消費者相談体制により、引き続き、区民の安全・安心な消費者生活の確保に、一層努めてまいります。

次に、文化・観光振興については、競技かるた発祥の地である本区と、競技かるたにゆかりの深い滋賀県大津市、福井県あわら市が、全日本かるた協会と連携して、「2020インターナショナル小倉百人一首かるたフェスティバル」を開催いたします。本事業は、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の共催文化プログラムである「東京2020NIPPONフェスティバル」に位置付けられております。競技かるたの国際交流団体戦や名人対クイーンのドリームマッチなど、様々なイベントを通じて「かるたの街 文京」を世界に発信するとともに、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会のレガシーとして、競技かるたを継承してまいります。

また、外国人観光客等のニーズを踏まえ、人気の観光スポットにおいて、夜の賑わいを創出するナイトライフ観光事業や日本文化体験、伝統工芸展を実施いたします。さらに、外国人向け観光情報の発信手段を充実するほか、「文の京まちなか観光案内人」では、外国人住民等による、母国語を用いた観光案内を行うなど、だれもが訪れたくなるまちの環境整備に努めてまいります。 

文化的で豊かな共生社会の実現

4点目は、文化的で豊かな共生社会の実現についてであります。 

多様性に富んだ共生社会において、すべての人が、主体的な地域活動や文化的な学びの場などを通じて、個性や能力を十分に発揮でき、暮らしの中に安心と豊かさを感じることができるよう、様々な施策を推進してまいります。

まず、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の取り組みについては、区内を通るオリンピック聖火リレーにおいて、ゴール地点のセレモニーに合わせた区独自の記念イベントを実施するほか、区民ボランティアによる聖火リレーの応援サポートを行うなど、区一丸となって大会を盛り上げてまいります。

また、東京2020大会の開催を記念し、花の五大まつり等の魅力を一層高め、大会終了後のレガシーにつながる新たな取り組みに対し、助成を行ってまいります。さらに、ホストタウン事業として実施する、ドイツ人アスリートとの交流イベント等を通じて、大会が目指す理念や精神を、スポーツ振興や共生社会の理解促進など、本区の発展につなげてまいります。

次に、男女平等参画社会の実現に向けた取り組みですが、本年は、第4回世界女性会議における「北京宣言」の採択から25年を迎える節目の年となるため、UN Women日本事務所や文京区女性団体連絡会等との協働により、これまでの歴史を振り返る事業を実施し、今後の男女平等参画社会の実現について考える契機といたします。

さらに、だれもが性別にかかわりなく、いきいきと安心して暮らすことが出来る社会の実現に向け、性自認及び性的指向に関する施策の一つとして、本年4月からパートナーシップ宣誓について受付を開始し、多様な性への理解促進を図ってまいります。

また、図書館については、ホームページや図書館システムを更新することで、利用者サービスの更なる向上を図るとともに、これからの図書館として新たに備えるべき機能や、老朽化した小石川図書館の改築等について検討を進めてまいります。 

環境の保全と快適で安全なまちづくり

5点目は、環境の保全と快適で安全なまちづくりについてであります。

国際的にも求められている地球温暖化対策の総合的な取り組みを推進するとともに、近年の大規模災害の発生による、防災意識の高まりに的確に対応するなど、だれもが快適で、安全・安心な暮らしを送ることができる、持続可能な都市基盤の整備を進めてまいります。

まず、環境保全については、改定を進めている「地球温暖化対策地域推進計画」に基づき、新たに、冷暖房効果の高い断熱窓の設置費用の一部を助成するなど、区民や事業者、区の各主体が一体となって、二酸化炭素排出量の削減等への取り組みを進めてまいります。

次に、災害対策については、災害情報の収集・分析などの一連の業務の効率化・迅速化を図るため、現行の災害情報システムを、ICTの導入や外部システム等との連携、外国人に向けた情報提供の観点から再構築してまいります。加えて、避難情報等を受信することが困難な避難行動要支援者等に対する一斉情報伝達システムを導入し、災害情報の伝達手段の多様化を図ってまいります。

また、災害発生時に円滑に避難所を開設するため、福祉避難所や妊産婦・乳児救護所、水害時等の避難所における、避難所開設キットの導入に向けた検討を進めてまいります。

さらに、災害に強いまちづくりを推進するため、引き続き、日医大つつじ通りと巻石通りの無電柱化工事を進めるほか、緊急輸送道路から避難所等までの短区間における無電柱化を進めるための基礎調査に着手いたします。

次に、良好な住環境の整備については、「公園再整備基本計画」に基づき、神明都電車庫跡公園及び西片公園の再整備工事を行うなど、地域住民のニーズを踏まえ、地域の憩いの場となる公園づくりを推進してまいります。加えて、公園等に、順次、防犯カメラを設置し、安全・安心な環境を提供してまいります。また、だれもが暮らしやすいまちのバリアフリー化を推進するため、坂下通りの道路整備を実施いたします。

さらに、小学生を対象としたワークショップを開催し、プロの写真家の指導の下、まち並みをカメラで撮影することで、地域の景観への関心を高める機会としてまいります。 

持続可能な行財政運営

最後に、持続可能な行財政運営について申し上げます。

今後も、限られた経営資源の下で、行政サービスを効果的に提供していくため、より質の高い効率的な行政体制を構築し、将来に向けて持続可能な行財政運営を推進してまいります。また、国においては、新たな社会を生み出す変革を、科学技術イノベーションが先導する「Society5.0」が提唱されており、本区においても、日々生み出される新しい知識や技術を応用した、新たな行政サービスの創出や業務改善等に、失敗を恐れることなく、積極的に取り組んでまいります。

まず、行政サービスの向上を図るため、戸籍や税に係る各種証明書の発行手数料や、住民税・軽自動車税・国民健康保険料について、キャッシュレス決済を導入するとともに、インターネット施設予約システムについて、対象施設の拡大や操作性・検索性の向上等、システムの再構築を進めてまいります。また、内部事務においても、申請書等のシステム入力作業や議事録等の作成に、AI等の最新技術を導入し、ICTを活用した働き方改革にも取り組んでまいります。

次に、旧元町小学校及び元町公園の保全・有効活用については、一体的な屋外空間を生かしつつ、歴史性や防災性、公共性に配慮した保全・有効活用が図られるよう、事業者と協議を進め、恒久的な利活用事業に着手してまいります。

また、清掃事務所や認定こども園を併設する、後楽一丁目の小石川地方合同庁舎については、実施設計に引き続き、既存建物の解体工事を進めてまいります。

加えて、老朽化の進む湯島総合センターについては、各施設の課題等を整理しながら、整備手法等の調査研究を行うほか、小日向二丁目の国有地については、国との協議が整い次第、特別養護老人ホームの整備等に向けた準備を進めてまいります。

さらに、大塚一丁目の都営バス大塚支所跡地については、事業主体の大学との協議により、令和5年度の開設に向け、図書貸出機能を含む地域活動センターや保育所、育成室等を整備してまいります。 

おわりに

「令和」の時代の幕開けから、間もなく1年が経とうとしております。時代の移り変わりと同じくして、「文の京」総合戦略の実施初年度となる本年は、本区における区政運営の大きな変革とチャレンジの年と捉えております。

ライフスタイルの多様化やICTの進展、人口減少社会の到来等、めまぐるしい社会の移り変わりを先取りし、スピード感を持って各施策を推進するとともに、中長期的な展望の下、社会情勢の変化に柔軟に対応しながら、様々な行政課題の解決に向け、たゆまぬ努力を続けてまいります。そして、先人たちによって引き継がれてきた、都市自治としての「文の京」の価値を更に広げ、すべての方に、住みやすさをより実感してもらえる区政運営に尽力していくことをお誓い申し上げます。

結びに当たり、区議会をはじめ、区民の皆様の一層のご理解とご協力を心からお願い申し上げ、令和2年の施政方針といたします。

ご清聴ありがとうございました。

 
【本文は口述筆記ではありませんので、表現その他に若干の変更が生じることがあります。】

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