文京区における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領に係る 留意事項について(通達) 平成28年4月1日から文京区における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領(平成 年 月文京区訓令第 号)が施行されることとなった。 この訓令は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「法」という。)第10条第1項の規定に基づき、法第7条に規定する事項に関し、文京区職員(非常勤職員及び臨時職員を含む。以下「職員」という。)が適切に対応するために必要な事項を定めたものである。  ついては、職員がその事務又は事業を行うに当たって、下記の事項に留意の上、遺憾のないように取り計るよう、所属職員に周知徹底されたい。 記 1 不当な差別的取扱いの基本的な考え方 法は、障害者に対して、正当な理由なく、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否すること又は提供に当たって場所・時間帯などを制限すること若しくは障害者でない者に対しては付さない条件を付けることなどにより、障害者の権利利益を侵害することを禁止している。 ただし、障害者の事実上の平等を促進し、又は達成するために必要な特別の措置は、不当な差別的取扱いではない。したがって、障害者を障害者でない者と比べて優遇する取扱い(いわゆる積極的改善措置)、法に規定された障害者に対する合理的配慮の提供による障害者でない者との異なる取扱いや、合理的配慮を提供等するために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ障害者に障害の状況等を確認することは、不当な差別的取扱いには当たらない。 このように、不当な差別的取扱いとは、正当な理由なく、障害者を、問題となる事務又は事業について、本質的に関係する諸事情が同じ障害者でない者より不利に扱うことである点に留意する必要がある。 2 正当な理由の判断の視点 正当な理由に相当するのは、障害者に対して、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否するなどの取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ないと言える場合である。文京区においては、正当な理由に相当するか否かについて、個別の事案ごとに、障害者、第三者の権利利益(例:安全の確保、財産の保全、損害発生の防止等)及び文京区の事務又は事業の目的・内容・機能の維持等の観点に鑑み、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。職員は、正当な理由があると判断した場合には、障害者にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めるものとする。 3 不当な差別的取扱いの具体例 不当な差別的取扱いに当たり得る具体例は、以下のとおりである。なお、2で示したとおり、不当な差別的取扱いに相当するか否かについては、個別の事案ごとに判断されることとなる。また、以下に記載されている具体例についてはあくまでも例示であり、これらに限られるものではないこと、客観的に見て正当な理由が存在する場合は不当な差別的取扱いに該当しない場合があることに留意する必要がある。 一 不当な差別的取扱いに当たり得る具体例 ア 身体障害者補助犬の同伴を拒否する。 イ 障害があることを理由に窓口対応を拒否する。 ウ 障害があることを理由に対応の順序を後回しにする。 エ 障害があることを理由に書面の交付、資料の送付、パンフレットの提供等を拒む。 オ 障害があることを理由に説明会、シンポジウム等への出席を拒む。 カ 事務・事業の遂行上、特に必要ではないにもかかわらず、障害があることを理由に、来庁の際に付き添い者の同行を求めるなどの条件を付けたり、特に支障がないにもかかわらず、付き添い者の同行を拒んだりする。 キ 本人を無視して、支援者、介助者や付添者のみに話しかける。 ク 本人の年齢に相応しくない幼児の言葉で接する。 4 合理的配慮の基本的な考え方 一 障害者の権利に関する条約(以下「権利条約」という。)第2条において、「合理的配慮」は、「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」と定義されている。 法は、権利条約における合理的配慮の定義を踏まえ、行政機関等に対し、その事務又は事業を行うに当たり、個々の場面において、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について、合理的配慮を行うことを求めている。合理的配慮は、障害者が受ける制限は、障害のみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるものとのいわゆる「社会モデル」の考え方を踏まえたものであり、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、障害者が個々の場面において必要としている社会的障壁を除去するための必要かつ合理的な取組であり、その実施に伴う負担が過重でないものである。 合理的配慮は、文京区の事務又は事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること、障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること及び事務又は事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないことに留意する必要がある。 二 合理的配慮は、障害の特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであり、当該障害者が現に置かれている状況を踏まえ、社会的障壁の除去のための手段及び方法について、「5 過重な負担の基本的な考え方」に掲げる要素を考慮し、代替措置の選択も含め、双方の建設的対話による相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で、柔軟に対応がなされるものである。さらに、合理的配慮の内容は、技術の進展、社会情勢の変化等に応じて変わり得るものである。合理的配慮の提供に当たっては、障害者の性別、年齢、状態等に配慮するものとする。 なお、合理的配慮を必要とする障害者が多数見込まれる場合、障害者との関係性が長期にわたる場合等には、その都度の合理的配慮とは別に、後述する環境の整備を考慮に入れることにより、中・長期的なコストの削減・効率化につながる点は重要である。 三 意思の表明に当たっては、具体的場面において、社会的障壁の除去に関する配慮を必要としている状況にあることを言語(手話を含む。)のほか、点字、拡大文字、筆談、実物の提示や身振りサイン等による合図、触覚による意思伝達など、障害者が他人とコミュニケーションを図る際に必要な手段(通訳を介するものを含む。)により伝えられる。 また、障害者からの意思表明のみでなく、知的障害や精神障害(発達障害を含む。)等により本人の意思表明が困難な場合には、障害者の家族、介助者等、コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う意思の表明も含む。 なお、意思の表明が困難な障害者が、家族、介助者等を伴っていない場合など、意思の表明がない場合であっても、当該障害者が社会的障壁の除去を必要としていることが明白である場合には、法の趣旨に鑑み、職員は当該障害者に対して適切と思われる配慮を提案するために建設的対話を働きかけるなど、自主的な取組に努めるものとする。 四 合理的配慮は、障害者等の利用を想定して事前に行われる建築物のバリアフリー化、介助者等の人的支援、情報アクセシビリティの向上等の環境の整備を基礎として、個々の障害者に対して、その状況に応じて個別に実施される措置である。したがって、各場面における環境の整備の状況により、合理的配慮の内容は異なることとなる。また、障害の状態等が変化することもあるため、特に、障害者との関係性が長期にわたる場合等には、提供する合理的配慮について、適宜、見直しを行うことが重要である。 五 文京区がその事務又は事業の一環として実施する業務を事業者に委託等する場合は、提供される合理的配慮の内容に大きな差異が生ずることにより障害者が不利益を受けることのないよう、委託等の条件に、対応要領を踏まえた合理的配慮の提供について盛り込むよう努めるものとする。 5 過重な負担の基本的な考え方 過重な負担については、個別の事案ごとに、以下の要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。 職員は、過重な負担に当たると判断した場合は、障害者にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めるものとする。 一 事務又は事業への影響の程度(事務又は事業の目的、内容又は機能を損なうか否か) 二 実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約) 三 費用・負担の程度 6 合理的配慮の具体例 4で示したとおり、合理的配慮は、具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであるが、具体例としては、次のようなものがある。なお、以下に記載されている具体例についてはあくまでも例示であり、これらに限られるものではないこと、客観的に見て過重な負担が存在する場合は合理的配慮の不提供に該当しない場合があることに留意する必要がある。 一 合理的配慮に当たり得る物理的環境への配慮の具体例 ア 段差がある場合に、車椅子利用者にキャスター上げ等の補助をする、携帯スロープを渡すなどする。 イ 配架棚の高い所に置かれたパンフレット等を取って渡す。パンフレット等の位置を分かりやすく伝える。 ウ 目的の場所までの案内の際に、障害者の歩行速度に合わせた速度で歩いたり、前後・左右・距離の位置取りについて、障害者の希望を聞いたりする。 エ 障害の特性により、頻繁に離席の必要がある場合に、会場の座席位置を扉付近にする。 オ 疲労を感じやすい障害者から別室での休憩の申出があった際、別室の確保が困難であったことから、当該障害者に事情を説明し、対応窓口の近くに長椅子を移動させて臨時の休憩スペースを設ける。 カ 不随意運動等により書類等を押さえることが難しい障害者に対し、職員が書類を押さえたり、バインダー等の固定器具を提供したりする。 キ 災害や事故が発生した際、館内放送で避難情報等の緊急情報を聞くことが難しい聴覚障害者に対し、電光掲示板や手書きのボード等を用いて、分かりやすく案内し誘導を図る。 ク 会場等の案内表示を分かりやすいものにする。 二 合理的配慮に当たり得る意思疎通・情報提供の配慮の具体例 ア 筆談、読み上げ、手話、点字、拡大文字などのコミュニケーション手段を用いる。その場合、文字の大きさ、声の大きさ、話す速度等は当該障害者にとってわかりやすいかどうかを確認しながら行う。 イ 意思疎通が不得意な障害者に対し、ゆっくり、丁寧に、繰り返し説明し、必要に応じて、コミュニケーションボード等を活用して、内容が理解されたことを確認しながら対応する。また、比喩や暗喩、二重否定表現、なじみのない外来語は用いない、時刻は24時間表記ではなく午前・午後で表記するなどの配慮をする。 ウ 視覚障害者に対し、「あちら」、「こちら」などの指示語は用いずに具体的に説明する。 エ 駐車場などで通常、口頭で行う案内を、紙にメモをして渡す。 オ 視覚障害のある委員に会議資料等を事前送付する際、読み上げソフトに対応できるよう電子データ(テキスト形式)で提供する。 カ 会議資料等について、点字、拡大文字等で作成する際に、各々の媒体間でページ番 号等が異なりうることに留意して使用する。 キ 会議の進行に当たっては、障害のある委員に対し、ゆっくり、丁寧な進行を心がける等障害の特性にあった配慮を行う。 ク 書類記入の依頼時等に、記入方法等を本人の目の前で示したり、わかりやすい記述で伝達したりする。本人の依頼がある場合には、代読や代筆といった配慮を行う。 ケ 印刷物を作成する際には、カラーユニバーサルデザインをふまえた見やすく、わかりやすいものとなるよう配慮する。 三 ルール・慣行の柔軟な変更の具体例 ア 順番を待つことが苦手な障害者に対し、周囲の者の理解を得た上で、手続順を入れ替える。 イ 立って列に並んで順番を待っている場合に、周囲の者の理解を得た上で、当該障害者の順番が来るまで別室や席を用意する。 ウ スクリーン、手話通訳者、板書等がよく見えるように、スクリーン等に近い席を確 保する。 エ 車両乗降場所を施設出入口に近い場所へ変更する。 オ 文京区施設の敷地内の駐車場等において、障害者の来庁が多数見込まれる場合、通常、障害者専用とされていない区画を障害者専用の区画に変更する。 カ 他人との接触、多人数の中にいることによる緊張等により、発作等がある場合、当 該障害者に説明の上、障害の特性や施設の状況に応じて別室を準備する。 キ 非公表又は未公表情報を扱う会議等において、情報管理に係る担保が得られることを前提に、障害のある委員の理解を援助する者の同席を認める。 ク 式典や行事等において、車椅子利用者の席又はスペースを設ける。