令和元年度 文京区障害者地域自立支援協議会 第1回就労支援専門部会 要点記録 1.日時 令和元年7月31日(水)14:00〜16:00 2.場所 文京シビックセンター 障害者会館会議室AB 3.出席者 瀬川聖美(部会長)・青木幸・上田みどり・松井裕・小泉昭・石橋綾       小泉洋平・内田靖・金江ちあき・小林美千代・中川正人・米澤俊太郎       大留真一・重田洋二・小谷野恵美・藤枝洋介   欠席者 志村健一(協議会副会長)・井上純子(副部会長)・米田直子・有村秀一    4.次第     1 開会     (1)部会長の互選、副部会長の指名        瀬川部会長 承認        瀬川部会長より井上副部会長が推薦され承認     2 議題     (1)令和元年度障害者地域自立支援協議会について     (2)これまでに抽出された課題やニーズの共有から現状把握、現状分析、        課題の整理について     (3)障害のある人への就労支援について      (4)その他 5.配布資料  ・開催次第  ・就労支援専門部会委員名簿・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 【資料第1−1号】  ・文京区障害者地域自立支援協議会要綱・・・・・・・・・・・・・・ 【資料第1−2号】  ・文京区障害者地域自立支援協議会の会議運用について・・・・・・・ 【資料第1−3号】  ・令和元年度文京区障害者地域自立支援協議会各専門部会下命事項について・・・・・                                   【資料第2−1号】  ・令和元年度障害者地域自立支援協議会スケジュール(案)・・・・・ 【資料第2−2号】  ・専門部会報告書フォーマット・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 【資料第2−3号】  ・これまでの検討テーマと平成29年度第3回就労支援専門部会事前アンケート結果 【資料第3−1号】  ・平成30年度就労支援専門部会 第1回から第3回 要点記録・・・・ 【資料第3−2号】  ・用語集・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  【資料第3−3号】   6.意見等 議事 (1)令和元年度障害者地域自立支援協議会について 【資料第2−1号】【資料第2−2号】【資料第2−3号】 事務局より説明 ○「これまでに抽出された課題やニーズ等の中から、優先順位及び実現可能性を整理した上で、次期障害者・児計画に盛り込む施策を検討する」施策への反映につなげる。 ○今年度は2回の開催となっており、親会への報告を経て、第2回は令和2年1月頃の予定。 ○第1回では、現状把握・現状分析を行う。自己紹介とともにそれぞれの立場から話していただく現状の課題から地域の課題整理につなげる。部会長・副部会長・事務局にて課題を整理し親会へ報告する。第2回では、課題の具体的解決策の検討・課題の具体的解決策の提案を予定している。 (2)これまでに抽出された課題やニーズの共有から現状把握、現状分析、課題の整理について 【資料第3−1号】【資料第3−2号】 事務局より説明 ○平成28年度から平成30年度までの振り返り。話し合われた内容の共有。検討テーマは7つ。  @実習制度について  ・企業実習、インターンシップは大変良い経験となっている。  ・支援者側と企業の考え方の違いがある。  A支援者の企業実習について  ・企業の意識や考えは、福祉作業所とは全く異なる。  B区役所インターンシップ制度について  ・「福祉から雇用への移行」の地域においての仕組みとして重要である。  ・定期的な受け入れがあると良い。  C福祉施設から一般就労への移行について  ・知的の就労継続支援B型事業所では、重度の利用者が多く、企業就労を目指す方が少ない。  ・求められる仕事の質が高くなっている。  D安定した就労継続への支援について  ・就労継続には生活支援が必要。  ・中小企業の雇用促進では、ノウハウを伝えるシステムが必要。  E定着支援に関すること  ・就労支援センターや地域との役割分担や連携が出来ることが理想。  ・地域の定着支援の枠組みが機能するための情報共有や連携の在り方が話し合えると良い。  ・社内で支援にあたる人材の育成が重要。  F短時間雇用  ・障害者枠以外の就労はハードルがある。  ・個人にあった時間で地域の労働ニーズに応えられるといい。 ○平成29年度のアンケートからは、連携・他分野への理解についてや、制度・仕組みについての回答が多かった。 ○昨年委員をされていた方から昨年のことをふまえて意見をうかがう。 ・短時間雇用についての研修会で、先端科学技術研究センターの近藤先生をお呼びしていたことについて。障害者雇用の雇用率にカウントされない時短での仕組みのことでハードルがあると書かれているが、現在の就業の状況は、お仕事をしたい人がなかなか会社がないというよりは、人がほしいが働き手がいないという会社の方が多いような印象を受けている。そうなると、働き方を多様にしていただいて短時間でも少しでも時給をもらえるシステムをもっている会社は、これからすごく可能性のある会社だと思う。就労支援専門部会では働き手のスキルアップや向上を考えがちだけれども、今は働かせる側のいろんな多様性を模索し始めている状況があるように思う。短時間労働の研究を、実際にやっている企業があれば参考にしてはどうか。努力している会社から学ぶ、私達も研究する。事業所に通所している方が働くということを考えやすくなるような研究をしてみてはどうか。 ・B型と移行をしている。知的がメイン。重度の方が増えてきていてそんなに就労をのぞんでいない。作業所で満足している。自分の意見をはっきり言えない方が多くて、そうなると親御さんの意見を聞くと生活を変えたくないという。移行はあるが4年間くらい在籍がない。障害者雇用から漏れてしまう人がいるのが現場の状況。どう事業所にアプローチするかは課題。働きかけ次第では結び付けられるかも、どう働きかけるか。環境を本人が望んでいるのであればそれを尊重していく。外で働くことが100%良いかは疑問と考えてしまう現状がある。 ・定着支援が課題。チャレンジ雇用が終わって、次の就職。3〜5年続いて、そこから退職。定着支援事業が終わってから支援が必要な方。今まで以上に難しさを感じている。最初がうまくいってもその後の変化で体調を崩すので実際にどこまでできるかというのがある。 (3)障害のある人への就労支援について ○社会福祉法人本郷の森という精神に特化した法人の理事長をしている。就労して10年経つ方の会社訪問を継続している。今後、どう引き継いでいくか、定年退職なども考えていかないといけない。就労継続支援B型では高齢化が進んでいる。在籍40人の平均年齢は40代半ば。行事に行くにも疲れて歩けない方がいるなど、これまでなかった課題がある。就労を希望していない方への支援をどうしていくか、働くことで人は成長していくと思うので、働きたい人は一人でも多く外に出したいと思い活動をしている。 ○全障害が対象。手帳を持っていなくても相談に応じている。事業主からの相談、地域の支援機関への支援技術的な助言援助、研修も行う。求人紹介はできないのでハローワークと連携。定着支援では、就労上のスキルだけでなく生活面の安定が大事。手帳がない、支援機関とつながりがない方も多い。生活のことで不安定になり仕事に影響することもあるので、仕事上のサポートだけではなく、体調や精神上のトータル的なサポートが必要。都内は支援機関が多いので、こうした機会を通じて連携ができるといいと思う。 ○知的障害の方を対象にした支援学校。高等部は1学年1クラス8名。全体で24名。企業就労は3割、7割は福祉的就労。3年生の段階で企業就労が難しかった場合、就労継続支援B型を視野にいれて取り組む方が増えている。就労継続支援B型から時間をかけて企業就労を目指す方もいる。 ○知的障害の生徒が主な特別支援学校。現在400人を超える。小中高一貫したキャリア教育を考えることになっている。高等部では、地域の支援級から進学する生徒もあり、人数が倍くらいになる。小中の先生との連携が課題となっている。時代が変化してきており、現場で実際に関わっている我々の声を活かしていきたい。少子高齢化を非常に感じている。少しつまずきがある生徒も選べる学校が増えてきており、多様性が出てきている。在校生が自己表現していける教育が課題。小中高と積み重ねた教育の中で幸せに暮らしていくことを目指して取り組んでいる。 ○現状は、就職・キャリア支援課が職員15名、相談員4名。昨年10月立ち上げたウエルネスセンターで特徴的なのは学生サポート室。不安、気落ち、つまずきに対して即相談に乗っている。ピアサポートルームは精神、発達、身体を含め手帳を持っている学生に対して相談に乗っている。10月組織したばかりで、ようやく板についてきたようだが、まだおぼつかない現状。 課題は5つある。 @キャンパスだけで4300人×4=16000人強。手帳取得者30人くらい(1学年)。グレーゾーン40人くらい(1学年)が非常に苦しんでいる現状。職員は15+4名だけ、ピアも4名くらいでとても対応しきれない。 A障害をもつ学生だけの対応ではなく、平行して10個くらいの業務をしており、他の職員も同じ。 B障害者の就労支援でいうと、プロの職員は少なく、私ともう1名だけ。スキル面、スタンス面でしっかり支援できない。 C学生の就労意欲の低さと言えば言い過ぎだが、相談に来るのは4年生くらいから。働ければ何でもいい、と言うがそれではよくない。1年生くらいから先ずは働くことを考えてもらうためにインターンシップを今年から開始している。 D保護者・保証人の過干渉と無関心。グレーの方でいうと、障害だと型にはめられる。手帳の取得を本人が希望していても、親が無関心で本人が甘えてしまうと言って学生自身が苦しんでいる現状。 ○東大病院精神科デイケアの作業療法士をしている。対象は、思春期青年期の統合失調症もしくは統合失調症疑いと診断がついているが、実際には発達障害や感情障害の方。週4日、毎日スポーツやお料理などのプログラムがあり、集団活動をしながら社会復帰に向けてのリハビリをしていく所。いらっしゃる方はとても若く、16歳以上で高校に在学中で通信制に転学して日中活動としてくる方もいる。大学を休学中で休学期間をデイケアでリハビリして復学したいという方、学校は退学もしくは卒業したが、いきなり企業就労は自信のない方が通っている。  現状の課題としては以下。 @若い方が多く、精神科の疾患の診断が早くつく方が増えていると思うが、受診が中学生とか早い段階でかかられるので、より一層働けるイメージもないし働くイメージもつかない。就職をしたいかどうかも分からない。働くイメージ作りをデイケアの中でどうしていくかが課題。 A手帳がない方、診断がはっきりつかない、けれど困っている方が若い方には多くいる。そういう方が手帳を取って働くのか、手帳は取らないで働きやすい働き方を探していくのか、というのが難しい。企業実習や短時間アルバイトをさせていただいて、配慮がいるかいらないかを、ご本人も支援者も実際に働いてみないと見極めがつかない方が増えている。 B発達障害とつく方がすごく増えており、ただ発達障害とついている方にもすごく差があって、集団で働くほうが力の出る方もいれば、完全個別作業のほうが力の出る方もいる。指示の出し方も同じ発達障害でも全然違うので、就職先をうまく探すところもそうだが、探した後の定着した後のノウハウをうまくまとめていきたい。 C定着支援は東大病院へ通院していれば長い方は5年10年と関われるが、だんだん大学病院から近くのクリニックに通院されるため地域の支援センターへ引き継ぐ方が増えている。最初に引き継がせていただいた担当者とは連携がとれるが、支援センターの中で担当者が替わることで伝わらなくなってしまったり、企業でも最初の担当者は分かってくれても異動されてしまったり担当者がいなくなってしまって、「元気になったからお薬止めたほうがいいよ」等言われて再発して入院になったりすることもあった。長く定着支援をしていくことが難しい。 ○クリニックの業務は外来の診察とリワークデイケアとなっている。対象は、うつ症状があって会社を休職している方。精神科デイケアの枠組みを用いて、一般のデイケアと同じように集団活動を行ったり、心理教育、SST、認知行動療法といったプログラムを行っている。生活リズムの立て直し、症状の安定を図りながら、再発予防を目的とした学習をしていただいた上で、再休職の防止を目的として通ってもらっている。去年からデイナイトケアを始めた。朝9時〜夜の7時まで通っていただくことで、会社に戻った時の残業も想定したような形で負荷を経験していただく枠組みを作っている。1日に延べで40〜50名ほどの利用がある。復職せずに転職を選ぶ方にも、同じようにプログラムに参加していただけるように受け入れている。中には地域の就労支援事業所などに通われて自分には合わなくて、力が余ってしまうということでリワークを選ぶ方もいる。しかし逆に、一般企業でバリバリ働いていろんなプロジェクトに関わってきたという方たちの中に入って、今度は挫折感を味わってしまうこともある。そういった方が散見されると感じている。最近、現状ある地域の資源に通うというところと、うちのリワークの中間の層がいるのではないか、とスタッフで話している。  地域の資源につなぐときに、個人的な問題ではあるかと思っているが、雑につないでしまっている感じがしている。メンバーさんに力があるというのもあり、HWや職業センターに相談するよう促すと、自分で相談することが出来てしまうことにスタッフが甘えてしまっているところもある。慢性的にスタッフが人手不足になりがちであることが影響もしているが、丁寧につなげるように考えていきたい。  いろいろな場で企業の方から、「就労継続を考えていく時に、医療機関への相談はハードルが高い、敷居が高い」とおっしゃっていただくことが多い。何を相談できるのか、そもそも相談できる場所なのか、就労できるかどうかの診断書をもらうだけの場と考えられていたりする。そのあたり、もう少し相談できる場所であると示せたり、連携を取っていくことができるといいと思っている。一方で、企業さん側からは医療機関は就労に理解がないのではないかというふうに思われていることも多いかと思うので、人手不足ではありながらもしっかり外に出て連携できるように考えていきたい。 ○移行支援事業所はHW飯田橋から5分くらいで、5つの路線を使って他区・他県からも来ているが、文京区の方が半分くらい。HWや厚労省の方が見学に来ることもある。  利用者は主に精神と発達の方で、大きく分けて2つのパターンがある。1つは就業していた方で、うつになった方や発達障害が途中で分かって離職された方。もう一つは、基本的にニートや引きこもりで、あまり社会に出ていない方。その方々に、一緒にプログラムに入ってもらってやっていくことが結構難しくて、どういう組み合わせにするのかなど苦労している。プログラムは1ヶ月で決めるのではなく1週間ごとその人に合わせて組んでいるので、スタッフの負担が大きい。私は代表でもあるが、主に実習とその後の就活を担当して現場に入っており、今は5人を見ている。実習に入ると、それまでのほんわかした空気から現実の風にあたる。企業見学が始まると、不安になって休んだり当日実習に行かなくなったりということがある。実習まで持っていくためにプログラムを工夫したり、事前に職場見学を入れて少しずつ緩和する。人に合わせてやっているが、緊張感を解いて実習へ持っていく、という形が最近はまる。なるべく早い段階で会社見学をする、大人数でまわるということをしている。  就活に関しては、職種は事務系の希望が多いが、実力スキルを踏まえたうえでなるべく本人の希望を叶えている。HWの案件もあるが、新規開拓もやっている。特に、従業員数300〜500人くらいでIT関係の会社は、取り組みがゼロベースで社長もしくは上の役員の方が対応に出て来る。時間をかけて、精神の方や発達の方がどういう仕事をやったらいいのかを一緒に考えて、実際に実習でやってみて検証を行っている。求人のある所にポンポン応募ということではない。実習に関して、東京しごと財団も利用して、できる方にはどんどんやってもらっている。  最近の働き方の1つとしては、テレワーク主体で就労された方がいる。本人もそれを希望されて、会社もそれで大丈夫だということで、コアワーキングスペース、自宅、場所の選択を出してもらって安定して現場の方と同じレベルで就労されている方もいる。不安だったが、企業と一緒に考えてそういう働き方もやっていこうかと思っている。  課題は職域開発で、新しいものをもっと開発していかないといけない。本人が合うなら事務的な仕事もいいが、ルーチン化すると離職率が高いのではと思う。飽きてきてしまったということで休職、結果的には辞めてしまう。本人がモチベーション高くできるものは何かを通所が始まった段階から組み立てていかないといけないと考えており、それももっと強化していくことが課題である。 ○文京区にお住まいの障害のある方の就労支援をしている。現在586名の登録がある。  主に企業への就労支援だが、内容としては採用前・採用後に分かれる。採用前は、働き方の相談、職場で働く上での合理的配慮について、どういう工夫があるのかを相談したり、企業実習や職業訓練のコーディネートをしている。必要に応じて面接同行等もしている。採用後は、定期的な相談に応じているが、特に人間関係や業務内容など仕事をしていく上での悩みや不安について相談に応じている。また、職場訪問をして職場の担当とも相談したり、実際にジョブコーチといった支援に入ることもある。  その他の事業では、余暇活動支援として、生活スキルの生涯学習の場である「生活講座」、アフターファイブの夕食会「たまり場」を東洋大学の食堂をお借りして行っている。その他、区内の関係機関の方たちとの「支援者研修会」、企業向けの就労支援セミナーとして講演会を開催している。福祉的就労の推進としては、「ハートフル工房」、障害者施設受注ネットワークの「ジョブ〜る文京」の事務局もしている。  就労支援をしていく中での課題は以下。 @障害のある方の裾野が広がっている。バックグラウンドが多様な方、いろんなニーズのある方の相談が増えてきている。そのため他分野の機関との連携が必要になるが、私達自身もそれぞれの機関がどういうところなのか十分に知らないと連携できないため、幅広い知識が必要とされていると感じている。特に医療機関との連携、定着支援事業所との連携。また、特別支援学校であればインターンシップなどを準備していく中で卒業後の就労を考える機会があるが、私立学校の方はなかなか実習の場がなくて、ご本人が今後について、どういう選択肢があるのか悩まれて相談に来るケースもある。最近ではサテライトオフィスや人材紹介会社など、採用プロセスに営利活動があるような関係機関との定着支援の連携の仕方の問題もある。 A就労する方が増えれば増えるほど、就労定着支援の件数も増えるので、職員のマンパワー等、効果的な取り組みを考えていかなければと思っている。  働き方の多様化ということでは、渋谷区で短時間雇用の取り組みがある。短い時間だと30分から、この仕事・この業務をしてくださいという仕組み。文京区に合うかどうかというところはあるが、実際に障害のある方の働き方は増えていると感じている。 ○私は、会社に入ってもう20年以上になる。今の会社は2つ目の会社。今日初めて参加させていただいて、会社員は私だけということにおどろいている。仕事内容は人事ではなく営業の支援。一日中パソコンに向かってデスクワークをしている。この会議には聞こえない人として参加していますが、私はどちらかというと例外だと思う。基本的に聞こえない人というのは、文章を読んだり書いたりも苦手で、もし文章を読んだとしても意味を十分にきちっと理解できない人が多い。そのため、聞こえない人たちの場合は、コミュニケーション障害と思っていただいていい。相手の方がどういうことを言いたいのか、また相手の方の気持ちを掴むのが難しいのが聞こえない人。そしてお互いに誤解してしまったりすることが多い。また聞こえない人の場合、思い込みが強い方が多い。せっかく就労してもコミュニケーションのトラブルが元で、すぐに仕事を休んでしまったり辞めてしまったりということが多いのが現状。そういう現状を皆さんに是非ご理解いただきたい。また、聞こえない人と言っても、重複の人もいる。見えない聞こえない方だと、更にコミュニケーションが厳しい。私はたまたま20年以上就労しているが、もっと重い障害の方について、彼らが働く機会を作っていければいいと思っている。  私の経験からいくつか話したい。会社では無意識の偏見があると思う。この人は聞こえないのだから難しいのではないか、こんなことぐらいまでしかできないのではないかとか、相手の人は思い込んでしまう。当然仕方ないと思うが、そういったことを分かった上で私は会社に入っていて、私はこれもあれもできますということを一つずつ自分の可能性を見てもらって広げてきた。そういうことをしていけば機会が増えていくと思う。  また会社に入った後の問題は、レジリエンスを高める必要があると思う。レジリエンスとはショックを受ける体験があっても抵抗力を高めて、さらに適応していく力を磨くという意味。会社というのは簡単に言えば株主の期待に応えるもので、株主を満足させるために会社は成長していかなければならない。組織を見直し、組織に合った人材にも変えていかなれければならない。今までやっていたことが明日突然変わったり、突然職場を異動させられたりすることも当然ある。そういうことには障害者は適応しづらいという面は感じている。障害者は学校にいる間に、会社というのはどういうところなのか、会社に入った後どういう問題が起きてくるのか、その問題にどうやって対処・適応していくのか、そういうレジリエンスを高めるような教育をしていただけるとありがたいと思う。そういうことを提供できる場所があるといいと考えて参加した。 ○大学卒業後建築の設計者として35年勤務。4年前に病気由来の脊椎損傷になり、社会復帰して3年強。症状としては胸から下の部分が麻痺しており立ったり歩いたりはできない。復帰のために社屋の改造を検討してくれたが費用面で難しく、古いビルをいくらやっても完全にならないため合意の上で退職した。昔の仕事内容を活用した仕事を、今は個人の資格で外注として契約してもらっている。僕の生活は、残存能力を保持したいということで週に5日1時間程度のリハビリ、掃除買い物が不便なのでヘルパ−に週3回来てもらったり、お風呂も危険で自分で入れないので助けてもらっている。在宅でのPCの仕事は完全に時間が自由で、今は定時出勤・定時退社は考えられないと思っている。  社会復帰当初、非常に不安が大きくて、文京区の障害者の団体に参加した。障害を経て障害の仲間と会うと、それぞれの個別性が際立つ。健常の時にはみんなが自分をあるルールの中に当てはめる。障害が重かったりすると、それが困難になってくる。僕もいた健常者の社会では、そんなことを考えるとバラバラになっちゃう。だけど、なってみて思ったが、ゆるーくそういうことを考えていったほうが日本の企業もよくなると思う。障害者自身だけでは決められない、囲まれているというか、受容しなければいけないものがあったりした時に、障害者が発言しにくいことがあるのではないかと感覚的だが感じている。人としてどうやって生きていったらいいのか、健常者も含めた社会のあり方に、非常に示唆に富む経験をさせてもらっていると思っている。 ○就職した方を拝見していると、収入面での安定ももちろんだが、本来持っている力を活き活きと発揮している。社会に出た時の影響や成果がすごくあると思う。就職を目指す方やB型からの就職にイメージが持てない方に、就労したOBに来てもらって話してもらったり、働いている様子を見学させてもらったりしている。私たちが話すよりもメンバーさん同士の刺激がすごく大きいと思っている。  課題は、 @50代の方は、もう一度就職を考えた時に、身だしなみやふるまいの部分の自己理解を深めていく所とかに、実際に改善の難しさがあって、2年間という期間での就職が難しくなってきている。 A定着支援で、徐々に地域の支援センターに引き継ぎ、最終的には会社でナチュラルサポートをしてもらうのだが、ちょっとの刺激で服薬を忘れる方もいるので、毎日就労後に前日の服薬とその日の仕事の様子を報告してもらったりしているが、その支援を支援センターへお願いするのは現実的ではないと思っている。とはいえ、定着支援の方は増えてきているので出来る枠組みを考えていく必要がある。 B企業の方の障害理解。担当者の変更による関わり方の変化。大企業や特例子会社では、週40時間近くからでないと難しいと言われてしまうが、精神の方は最初20時間〜25時間から始められた方が最終的に長く続けられると思う。一方で雇用率未達成の中小企業では、マンパワーもあって実際は余裕がないことが分かる。その為、企業への理解啓発活動等も必要だと思うが、日々のプログラム・定着支援がある中で、企業開拓まではできていない。 C経営的な問題としては、メンバー確保が必要になってくると思われる。 ○知的障害の方のB型事業所、工房わかぎりの施設長をしている。B型の事業所の傾向として高齢化している。若い方も入ってくるがここ2〜3年高等部卒業の新卒はいない。企業就労を目指していたが途中でやはり難しいということで入る方も増えている。企業就労をずっと続けていて60歳で退職を迎えて、その後日中活動の場所がほしいとのことで入ってきている方もいる。B型事業所にはそういう使い方もある。企業就労から漏れている方も必ずいる。本人も家族もゆっくり日中活動を保っていきたいと考えて、楽しむ生活、無理をせずに本人に合った生活をしていきたいという方もいる。家庭の事情で母子家庭になったり、親御さんたちが亡くなられたりといった方には、いずれは就労支援センターやハローワーク、いろんなところに連携をお願いしながら企業就労を考えていかなければという方もいる。  区役所が行っている委託事業やインターンシップはとてもありがたいと感じている。事業所内だけの人間関係だけではなく外に出て行う新しい環境でのお仕事は、より現実的な社会と直結した仕事であるので、刺激にもなるし勉強にもなる。  課題は工賃の向上。品質を向上させながら収益を延ばしていけるように努力している。 ○就労支援の難しさを感じる所は、知的障害を持っている方の中には能力が高い方もいるが、本質的な部分がわからなかったり、自分の都合のいいように解釈してしまったりするところ。現場に入った時に指示されたことがなかなか理解できないことがある。雇う側、現場も分かってなかったりする。そうしたことが重なって人間関係が崩れて離職したケースもあった。本人の能力を現場の方にどう理解してもらうか。理解や把握をしていただければ長く続けられると思う。  いろいろあって辞めてしまった場合、もう一度就職しようというモチベーションがなかなか上がらない。辛い失敗体験が消えないケースがある。作業所に戻ってくると作業所の中は居心地がいいので、なかなか次のステップに進めない。離職して2年経って、生活リズムが崩れてなかなか作業所に通って来られなくなるというケースもある。  共同受注やハートフル工房もあり工賃も上がってきているが、収入の増えたグループホームを利用している人が助成金を打ち切られてしまったケースや、工賃が上がったことによってトータル的にはマイナスになってしまう事がある。保護者の方から、工賃はこれ以上渡さないでください、と言われたこともあった。 ○障害者雇用の文京区の現状は、法定雇用率を企業の25%はクリア。東京都の数字より5%くらい低い。文京区は中小企業が多いこともある。3年程前から、雇用に踏み出せない企業に対し、職業体験の提案や助成を支給する事業を始めて徐々に実績を上げている。  就労定着支援については、区内4事業所での課題は、日中働き終わった後の対応で夕方から夜の職員の確保が難しいこと。移行支援事業所が定着のサービスをしているケースが多いが、自分の法人での方についてのアセスメントは難しくないが、他の法人からの方についてのアセスメントは難しい現状があり、これらは今後クリアする必要があるということ。  障害者雇用の現状では農福連携が言われており、郊外の広大な農園でいろんな企業が入って障害者が働くのが流行り出している現状がある。文京区でも知的障害の方で、就労に結びつかなかった方がやっと働けるようになった例がある。家族も喜んで一見万々歳のように見えるが、遠方に通って、地域で働くより遠い所で働いている現状がある。行政としてもどう捉えるか難しいところで、一方で本人や親は喜んでおり、こういう流れは注視していきたい。 ○文京区内に二つの保健サービスセンター(保健サービスセンターと本郷支所)があり住所ごとに管轄が分かれている。各地区ごとに担当保健師が決まっており相談に応じている。相談を受けている方は、就労に関していえば精神障害の方や難病の方が担当になる。サービスセンター全体の業務は障害の方に限らず、妊娠期からの切れ目のない支援ということで、妊娠届を出された時から始まり赤ちゃんが生まれたら健診や訪問等のご相談に応じている。  就労ということでは、B型、就労移行に通う時に受給者証が必要で、その際の面談調査を行っている。その後も継続的に関わらせていただいている。定着には生活の安定が必要でそれがないと仕事の安定も難しい。就労支援では出会うチャンスが少ないが、こういう機会を通じて皆さんと連携していきたい。 ○2008年にトヨタループス設立。2009年4月より営業開始し同年10月に特例子会社認定。本年で12年間障害者雇用に携わっている。現在トヨタループスの社長以外に豊田市の自立支援協議会の運営委員と障害者雇用企業支援協会(SACEC)の理事を務めている。 (課題)身体障害者の高齢化により、雇用の中心が知的、精神に移ってきており、その結果「定着化」が大きな課題である。当社でも理由は様々だが離職が発生してきており、数年前までは年に1〜3名程度がここ最近は年に10名程度出てきている。対応として本社に精神科医、臨床心理士、精神保健福祉士、社会福祉士による支援グループを設置し、名古屋、東京の中核拠点にも精神保健福祉士の支援員を配置し組織的に定着支援を行っている。 <事務局代読> (4)その他  事務局より連絡 ・第2回就労支援専門部会は令和2年1月頃を予定している。 1